後日乗

ごにちじゃう Life After Tuck in Tokyo

米国Dartmouth College, Tuck SchoolでMBAを取る過程を
365日x2年余すところなく記した「ダートマス日乗」
帰国後 東京における日々を「後日乗」として 再び記す
(副題としてはあまりに長い)
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「理想の死」と「尊厳死」
自分にとって、「理想の死」とはどんなものだろうか、とよく考える。

病院ではなく、自宅で
苦しむことなく、安寧に、
独りでなく、愛する人々に囲まれた死。
おそらく、そうしたものが、「理想の死」なのだろう。

言うまでもなく、ほとんどの人は、それとはかけ離れた死を得、
確率論的に、僕もそうなる可能性は、やはり高い。



「戦艦武蔵」著者の作家・吉村昭氏が、
先日亡くなった。
体に付けられたチューブを、自ら引き抜いての死を、
奥様は、「自決」と表現していた。
吉村昭氏にとって、チューブにつながれた生は、
生ではなかったのだろう。



今日、父の手術が成功した。
点滴の代わりに、鎖骨のところにチューブを埋め込む手術。

点滴の針が入らなければ、体調を崩した時に手の施しようがなくなる。
医師は、
「点滴の針が入らなくなったのをきっかけとして、もう諦めるのもひとつの考え方だ」
というようなことを言ったらしい。

しかし、我々家族は、手術をしてもらうことを選択した。
これが父の意思と合致しているかどうかは、誰にも分からない。


二年前に、父が倒れた時、
「手術をすれば一命を取り留めることはできるかもしれません。
しかし、植物状態になる可能性は高くなります」
と医師から言われた。

家族の前に存在した選択肢は、ふたつだけ。
手術をするか
手術をしないか

母の頭には、元気だったころに父が言ったという
「チューブにつながれて植物状態で生きてても、生きてる甲斐はないよ」
という言葉が、重々しく、あった。

それでも、「手術をする」を選んだ我々家族は、
医師の警告どおりの結果を、二年間にわたって受け入れている。

あんなに饒舌だった父は、
何も言えぬようになってからも、
胃から血を流しながら、
懸命に生きようとしている。

治療の中止に「尊厳」ありて、
生きようとする父に、「尊厳」なきとは、
今の僕には、やはり思えない。

元気だった頃の、「仮定」に基づく意志と、
実際に「現実」に直面した時の意志が、
常に等しいと考えるのは、
現実を知らぬ我々の傲慢だと思うのだ。


自分にとって、「理想の死」とは、何だろうか、と考える。

父にとって、「生」とは、「死」とは、何だろうか、と考える。
気持ちを伝えてくれれば、どんなによいか、と考える。
| 橋口寛 | 看病日誌 | 23:59 | comments(4) | trackbacks(1) |
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元気だった頃の、「仮定」に基づく意志と、
実際に「現実」に直面した時の意志が、
常に等しいと考えるのは、
現実を知らぬ我々の傲慢だと思うのだ。

私もそう思います。
薬剤師の姉が普通ならそういう状態では一年くらいしか持たない、と言っていました。
だからこそ、お父様の生きようとする意志を感じます。
人は体で感じるものを、全て脳で意識するとは限りません。

お母様が毎日病院に通っていらっしゃるのを、お父様は体でご存知だと思います。あなた方家族の選択も体で感じ取っていらっしゃると思います。

言葉で意思表示することがあまりにも当たり前のことになっているので、話し合う事が出来ないのは、とても切ないことですが、人が、まして家族が心を通じ合うのは言葉だけではないと考えて、お互いの体で感じあえる感性を信じて、たびたび見舞ってあげてください。
| 郁 | 2006/09/26 12:47 PM |

お久しぶりです。

私は入退院を繰り返した父が危篤になった時、「もう入院させないで!」と母に頼みました。父が自宅に居たいと言っていたからです。

でも結果病院で最善の努力をして頂きました。

周りに居る人が愛する気持ちを存分に注いだり、周りの人同士の愛情が通い合ったら、それがその人への最善のことなのかもしれないと今は思っています。

橋口さんのお父さんは、ずっとそんな様子を一緒に楽しんでいらっしゃるのかもしれませんね。
| おりーぶ | 2006/09/28 8:18 PM |

郁様:

ありがとうございます。

言葉で表現することが当たり前になってしまっていますが、
もともとは、言葉なしで親に対して気持ちを伝えていたんですよね。

しっかり気持ちを伝えたいと思います。
| 橋口 | 2006/10/16 12:54 AM |

おりーぶさま:

お久しぶりです。
どうもありがとうございます。

そうですね。
そのとおりだと思います。
| 橋口 | 2006/10/16 12:56 AM |










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| bobの書庫 | 2006/12/14 9:03 PM |
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