後日乗

ごにちじゃう Life After Tuck in Tokyo

米国Dartmouth College, Tuck SchoolでMBAを取る過程を
365日x2年余すところなく記した「ダートマス日乗」
帰国後 東京における日々を「後日乗」として 再び記す
(副題としてはあまりに長い)
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病室にて
陽だまりの病室へ、父を見舞う。


一年三ヶ月もの間モノを握らぬ手の平は、まるで赤子のよう。

その手を握り、話す。
孫のこと、
映画のこと、
船のこと、
仕事のこと。

モノローグ形式のダイアログ。

父は、半眼のその眼を左右に動かして、
やがて重力に負ける。

力及ばぬ僕は、理解の証左を見つけようとして、
どうしても見つけられない。



父のベッドの向かい側。
先日、娘とあや取りで遊んでくれたじいさんは、
静かに静かに寝息をたてる。
ただ眠っているかと思えばさにあらず。
先日、急に周囲に対して怒りだし、
鎮静剤を打たれているのだと聞いた。
見舞いに来る家族は一人もいないというじいさん。
鎮静剤に反対してくれる人もいなかったのか。


いつも、「痛い!痛い!」と家族や看護婦に不平をぶつけていた少年。
「男のくせに情けない」と思っていた僕は、
彼が癌で亡くなったのだと聞いて、激しくそれを後悔する。
僕の人生で経験したことがないくらいに、
きっと彼は痛かったのだろう。
何も分からずにあんなことを思ってごめんなさい、と思う。


父のベッドのの左隣。
ずっといびきをかきつづけていた老人。
「もう帰るよ。帰るからね」
と30分近く言い続けて、ようやく奥さんは帰る。
「元気に働いていたのに、急にこうなっちゃった」
「橋口さんは目が開いているから、きっと分かってますよ」
「うちのは目さえ開けてくれないから・・・」
限りなく希望薄れし病室で、
病状を相対化してしまう哀しさ。
相手をつい羨んでしまう、哀しさ。



真っ白な、明るい病室。
温かく、穏やかな空気。

長い時間と、無数の想いを抱え込んで尚、
明るく、穏やかな、陽だまりの病室。
| 橋口寛 | 看病日誌 | 23:59 | comments(6) | trackbacks(0) |
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はじめまして。尾関さんのブログから拝見させていただくようになりました者です。お父様をはじめ、橋口さんの周りの方々はお幸せですね。私は当時いつまでも親は生きているものと錯覚しており^^;ずいぶん冷酷な娘でした。もう少し優しい言葉のひとつでも入院中にかけてあげられたらどんなにかと、わずか入院半月で逝ってしまった父に謝っています。そして、孫の姿どころか家族さえも持てず、きっとあの世でも心配させているのではと。なのにお若い橋口さんの素晴らしい感性に、お父様やお母様の素晴らしさをも垣間見ます。そして全ての現象には意味があると。
| 洋子 | 2006/02/07 1:07 AM |

橋口さん、

一見平和なようでいて、平和ではない、何とも言えないあの病室を、絶妙に描写されていて、情景を目に浮かべながら読みました。

>いつも、「痛い!痛い!」と家族や看護婦に不平をぶつけ
>ていた少年。
>「男のくせに情けない」と思っていた僕は、
>彼が癌で亡くなったのだと聞いて、激しくそれを後悔する。

歌手の本田美奈子が亡くなった時に、「いっぱい、がんばれって言ってごめんね」と
芸能人の誰かが涙ながらに言っていたのを、鮮明に覚えています。

僕は、父親を亡くした時、あまりに突然で考える間もなく、何もできなかったことを今でも後悔しています。
がんばれ、とか、そんなことも言う間もありませんでした。
でも、そのような結果になったことに対して、何かの意味があるのだと、前向きに解釈して生きています。
っというよりも、それしかないと思います。

橋口さんは、今できることを精一杯をされている、と勝手にお見受けしています。
その気持ち・行為が、お父さんに伝わっているかどうか、というもどかしさを以前にも書かれていますが、
恐らく、そういう行為をご自身がされていること自体が一番重要なことなのではないか、思いました。
きっとその思いは・・・と思っています。

病状が回復されること、心からお祈りしています。
| Mac | 2006/02/07 4:05 PM |

洋子さん:

はじめまして。
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、起こった出来事には全部意味があるんですよね。後悔も含めて。
これからも宜しくお願いします。
| 橋口 | 2006/02/10 6:27 PM |

Macさん:

ありがとうございます。そうですね。
親はどんな状態であっても、こどもに何かを教えてくれるものですね。

Macさんは、母上をすごく大切にしていらっしゃるようで尊敬します。
私もしっかり孝行します。
| 橋口 | 2006/02/10 7:26 PM |

はじめまして。はなです。
色々ネットで、検索していて…橘口さんのブログに、たどり着きました!!私の父(62歳)も2月に、左脳くも膜下出血を起こしてしまってクリップ手術をし、腹腔シャント術をしましたが……当日の父の状況は既に、体の硬直が始まって、瞳孔も左右が開いてました…心臓はしっかりしてましたが…救急車の中で、救急隊員が運転手に「病院まで!まだか!」って、凄く恐かったです今だに、救急車の音が恐いです!!
 現在の父は気管切開して、目は追視して左手・左足は動いて、先週にシャント術をして微かに右手が動いています。…母親と私で病院に付き添っていますが、私の方が体調を壊してしまい母親にまかせっきりになってしまいました…2週間近くダウンしています。母親は69歳なのに元気です!!それに比べて私は28歳(父が倒れた日から仕事は辞めました)なのに…情けない・・・あっ!なんだかダラダラと書いてしまってすみません。
 はじめは、命だけでもって思ってたけど、人間は欲がでるもんなんですね…次は意識回復してっと。。。諦めたくないないですもんね!!お互いやれるだけ父親にしましょう!!体を壊さない程度で。自分の体調が悪かったら本当に何も出来ないから…今のさくらがそうです。。。体を壊して情けないです。。 
 では、くれぐれもお体には気をつけてください
 
 

 
| さくら | 2006/04/13 3:12 PM |

さくらさん:

コメントありがとうございます。
目を追視できて、左半身が動く、というのは素晴らしいですね。
シャントも成功したようでおめでとうございます。

これから少しずつ少しずつ良くなっていくと良いですね。

いろいろとご心労も多いことと思いますが、お体気をつけてくださいね。

応援しています。
| 橋口 | 2006/04/16 9:43 PM |










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