後日乗

ごにちじゃう Life After Tuck in Tokyo

米国Dartmouth College, Tuck SchoolでMBAを取る過程を
365日x2年余すところなく記した「ダートマス日乗」
帰国後 東京における日々を「後日乗」として 再び記す
(副題としてはあまりに長い)
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わらび座のこと

今朝の日経新聞の文化欄(私の履歴書・交友抄と並ぶ日経新聞におけるもっとも価値ある面のひとつと思料)に、松山の「坊っちゃん劇場」におけるミュージカルの話が載っていた。

日露戦争時のロシア兵捕虜と収容所の置かれた松山市民との交流については何度か読んだことがあり、それは興味深いテーマだと思ったが、目を引いたのは、「坊っちゃん劇場」の成り立ちについての箇所だった。

劇団「わらび座」と愛媛の地元企業との共同出資で作られた、と書いてあったのだ。

「わらび座」という名前で圧倒的に思いだす記憶は、11年ほど前の出来事だ。


当時、僕はアメリカのニューハンプシャー州ハノーバーというド田舎に留学していて、妻子も日本に帰して一人暮らしをしていた。

いつも晩御飯のラップとホットコーヒーを買うデリに夜中に立ち寄ると、若い東洋系のカップルがタバコだかビールだかを買おうとして、
「あなたたち、未成年でしょ!ID見せなさい!」
と問い詰められている。

二人は英語が分からないようで、とても困った様子だったので、話しかけたところ、日本人だった。
(日本人はたいてい若く見られるけれど、彼らは僕から見ても中高生に見えた)

パスポートを示して無事に買い物ができた二人と、デリの中でしばらく立ち話をした。

 ・秋田のある町にある「わらび座」という劇団の団員であること
 ・現在全米ツアーの最中であること
 ・明日の夜ダートマス大学所有のホプキンスセンターで公演すること
 ・NYやボストンを回ってきたが、こんな小さな町に来たのは初めてであること
 ・こんなところで明日本当に人が入るか不安であること
 ・でも、日本人にあえて嬉しかったこと

などを語ってくれ、
僕は明日の公演に絶対に見に行くことと、公演終了後に楽屋に遊びに行くことを約束して別れた。


翌日、同級生を誘って見た彼らの公演を身に行った。
会場は地元の人たちで超満員だった。
三味線、太鼓、民謡による公演は、素晴らしかった。

最後の太鼓では、アメリカの地で聴く特別な日本の響きに圧倒され、ただただ涙が溢れて止まらない。
会場全体が、割れんばかりのスタンディングオベーションで彼らを祝福している。
昨日のカップルも、三味線と太鼓を見事に演じており、
もはや中高生には見えなかった。

終演後、楽屋に遊びに行った。
しばらく待って、彼ら二人とその仲間二人、僕、そして同級生の合計6人で
僕のオンボロのニッサン・セントラ(日本名サニー)にぎゅうぎゅう詰めで乗って、
きゃあきゃあ言いながら僕の部屋に遊びに行った。

小さな部屋で、床に車座になってビールを飲み、精一杯のラーメンでもてなした。

彼らは、「わらび座」の劇団の中で生まれ、物心つくころから三味線や太鼓や民謡をまなぶ。
小さな時からわらび座の団員となることを宿命づけられて、芸一筋に生きてきた。
そしてこれからも死ぬまで芸の道を追求しつづける。
その雑物のない純粋さ、日々の練磨の深さ、運命の力強さ、などが、
なんとも言えない深みを彼らの芸に与えているのだろう。
その夕鶴の姿に、現代の若者にはない哀しみを与えているのだろう。

30を過ぎてアメリカの片田舎で学生をやり、未来定まらぬ僕と、
20そこそこで既に芸歴20年近い彼らと、
一瞬だけ交わった時間。

「日本に帰ったら秋田に遊びに行くよ」という、
11年前にした約束のうちの二つ目をまだ果たしていないことを思い出した。

(上記のわらび座についての記載は、あくまで僕が当時聞いた話をもとにしています。
今は違うかもしれませんし、わらび座も多面的重層的である可能性は大いにあります。
当時見たウェブと今見るウェブとで随分印象が変わったために補記まで。)

| 橋口寛 | 後日乗 | 23:59 | comments(0) | trackbacks(8) |
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