後日乗

ごにちじゃう Life After Tuck in Tokyo

米国Dartmouth College, Tuck SchoolでMBAを取る過程を
365日x2年余すところなく記した「ダートマス日乗」
帰国後 東京における日々を「後日乗」として 再び記す
(副題としてはあまりに長い)
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25年ぶりの高校野球

今日は、川崎市の等々力球場で行われた、夏の高校野球の神奈川県予選二回戦の、百合丘高校対港北高校の試合を、息子を連れて見に行った。

百合丘高校野球部の応援のためだ。


僕は高校1年生から2年生になる時に、大阪の清風高校から百合丘高校に転校した。
少し前に川崎市内に単身赴任していた父に、母・姉と共に合流するためだった。
(就職してまだ結婚前だった姉はそのタイミングで大阪から東京に転勤した)

清風高校には野球部がなく、百合丘高校で野球ができることが楽しみだった僕は、転校してすぐに野球部に入部した。
一年間のブランクはあったものの、良い仲間に恵まれて、本当に野球は楽しかった。
学校から離れた自宅から通っていた僕は、朝練習のために朝5時に家を出て、自主練習を終えて帰宅するのは午後10時過ぎだった。

そんなある日、自主練を終えて深夜に帰宅した僕に父が言った。

「ヒロシ、来週から清風に転校するからな。もう全部話はつけたから」

その時の驚き、親の理不尽さへの怒り。
しばらく後におそってきた無力感。
なかなか忘れることのできない出来事だ。

激しいやり取りを経て、この一件は父と僕との間にある種のわだかまりを残したし、それは父が病に倒れて亡くなるまでついぞ消えることは無かったように思う。
この件に触れるとき僕は内心冷静でいられず、長い間一種のタブーのような存在になっていた。


僕が、「絶対に子供たちに進路を押し付けることだけはしまい」と固く心に誓ったのも、間違いなくこの一件がきっかけだった。
今の自分の子供への接し方に決定的な影響を与えた出来事だった。

昨年、熊本に住む祖父が大往生でなくなる寸前、僕に、
「お父さんは悩んで手を尽くしてヒロシ君を大阪に転校させたとやけん、感謝せんばいかんたい」
と何度もわざわざ強調したほどだった。


その百合丘高校野球部の試合を応援しに出かけた。
転校して以来、初めての応援だった。


きっかけは、同期のサイトウが、僕のことをFacebookで見つけてくれ、誘ってくれたことだ。
1987年以来、25年ぶりのことだった。

球場について、サイトウの顔を見た瞬間、一瞬で当時のことを思い出した。
頭は禿げ上がっているのに17歳のままに見える。
隣に座っているクマガイ、サカタの顔を見ても同様だった。
彼らも僕を見て、「わかるもんだなー!変わらねえなー!」と、笑っている。

ベンチの中には、同期のコイケが監督として指揮をとっていた。
円陣にゲキを飛ばすコイケもまた、あの頃のままに見えた。

グラウンドでは、我々から24代くだった後輩たちがプレーしていた。


試合は5−1で勝利した。

試合後、コイケにも挨拶をしてから、皆で近くのファミレスで食事をした。
25年ぶりに会った仲間と、その分だけ年くった仲間と、ビールを飲みながら。


すべてのわだかまりが心の中で溶けていくような、
何ともいえない幸せな気持ち、温かいものを感じた。


あの時、父が僕を無理やり転校させなければ、僕は野球を三年の大会まで思う存分できただろう。
しかし、その先の人生はすべてが変わっていたはずだ。

大学には、志望校に現役で受かることはなかったろう。
卒業年もちがっただろうし、就職する会社もちがっただろう。
会社の同期だった妻とは会わずに人生を送ることになっただろう。
二人の子供たちには出会えなかっただろう。
きっかけがなく、アメリカに留学していなかった可能性も高いし、
コンサルタントになることもなかった可能性が高い。
結果、今、僕が出会っている人たちとは誰一人出会っていなかった可能性が高い。


僕は・・・きっと、全く違う人生を生きていたのだ。


そんなことは、今生において決して起こりうることではなかった。
父はたまさかそこでその役割を果たしたに過ぎない。
すべては運命的な出来事だったのだ。

そのことに、あらためて今日、等々力のファミレスで気づいたのだった。


結局僕は、25年たっても、ずっと父のことを赦してなかったのだ。

僕は今日、25年ぶりに、亡くなった父のことを本当に赦せたのだと思う。


その機会をくれた同期のサイトウと皆に心から感謝したい。


| 橋口寛 | 後日乗 | 23:37 | comments(2) | trackbacks(2) |
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突然の書き込み失礼いたします。
偶然ここにたどり着きました。私は百合高で3年間過ごしました。はるか昔の話ですが・・・。当時は何の思い入れもなかったのですが、今でも親友と呼べる友人と出逢えたのも百合高だったし、ユーミンの卒業写真を聞くたび思い出すのも百合高です。野球部の応援にこっそり行ったこともあり、懐かしく思います。いろいろな思いがあり、今こうしていられることに感謝しています。  お父さんを赦せた・・というコメントにちょっと涙が。
人間万事塞翁が馬。何が良いことで、何が悪いかなんてわからないものですよね。運命的だったと言える生き方をされているのは、とても幸せだと思います。私もそうなりたいと思います。                     
| TOM | 2013/02/27 9:57 PM |

TOMさま
コメントありがとうございます。
多くのことは時間が経過しないと分からないものですね。
とりたてて大したものではないと思っていたものが時間がたって振り返ってみればとても得難いものであったり、その逆であったり。。
いくつになってもなかなか直観で判断することができないのですが、ただただ今を大切にするしかないですね。
百合高つながりの方にコメントいただき、嬉しかったです。
ありがとうございました。
| hashiguchi | 2013/03/05 1:44 AM |










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