R君とは、8歳の時に出会った。
15歳までは、ほぼ毎日のように会い、遊んでいた。
16歳から18歳までは、週に一回くらい会った。
19歳から24歳くらいまでは、年に数回くらいに激減。
25歳から28歳くらいまでは、年賀状だけのやりとりになった。
そして、29歳からは、お互いが国内外で転居を繰り返したこともあり、
消息が途絶えてしまった。
先日、オルタナサロンで出会った企画会社の社長が、
偶然にもR君と高校の同級生だった。
R君の名前を出した瞬間、ここ10年ほど思いだすこともなかった記憶が、
フラッシュバックのようにすべて束になって押し寄せてきた。
転勤族の子供として大阪千里の新興マンションに越してきた僕が、
その土地に何百年も先祖代々住むR君と初めて会った時のこと。
江戸時代に入る前は、堀がめぐらされていたというR君の信じられないほど
広大な自宅(実際に堀と石垣のあとがあった)で、遊んだこと。
拾ったエロ本を、R君の自宅敷地内にあった空家の中に
たくさんため込んでいたこと。
ビーダマ、べッタン、コマ、タンテイ、戦争ゴッコ、野球、相撲、、、、、
ありとあらゆる遊びをしたこと。
校門から自宅までの道の途中にあるぼっとん便所の汲み取り口に
爆竹を投げ込みながら帰ったこと。
たまに「コラー!!」と怒鳴られると、
「ババこきながら、えらそうにぬかすなボケー!」と叫んだこと。
僕が声をかけて隣の南小や西小に遠征(という名の殴りこみ)に行く際には、
R君はもっとも頼りになる喧嘩野郎だったこと。
小4のときに60人くらいの血判状を作って南小に遠征に行った時は、
大人がたくさん出てきて大騒ぎになったこと。
スーパー・イズミヤの階段で、西小の番長たちと喧嘩になった時に、
相手がすでに身をかわしているのに、R君はそれでも止まらずに壁を何発も
殴り続けて両こぶしが血だらけになっていたこと。
ワンカップ大関におしっこをためた「手榴弾」をたくさん作って、
さらにその中にムカデやミミズを入れて、喧嘩に臨んだこと。
僕は小学校時代からなぜか「ババア」と呼ばれていて、
路上でそう呼ばれるたびに、本物のババアたちが「誰がババアやねん」とむっとしていたこと。
「うひょひょ新聞」と言う名前のナゾの新聞を発行していて、
毎日記事を書きまくって年間300号以上発行したこと。
小学校から中学校まで同じチームで野球をしていて、
R君は左打ちのロングヒッターだったこと。
中学校では、僕が一年生からレギュラーだったのに対して、
R君は三年の夏もベンチに入れなかったこと。
バイクに二人乗りしていて、センターラインをオーバーし、
車と正面衝突しそうになってすべてがスローモーションに見えたこと。
バイクで派手にこけたR君が深夜に我が家にやってきて、「なんか肩が痛いねんけど」と、
ありえない角度に曲がった鎖骨を見せながら真面目な顔をして言ったこと。
深夜に、網戸を叩いて「ババア」と小声で呼び出されて、
屋上で酒を飲んだり、タバコを吸ったり、シン(後略)・・・したこと。
中学時代に夜行電車で東京に旅行して、
まあ、イロイロなことがあったこと。
高校受験では同じ高校を受験して、R君は合格して、
僕は落ちたこと。
ハンバーガー屋でバイトしていたときにR君が客としてやってきて、
「何やねんこれ!チン毛入れんなや!」と大声で言われたこと。
高校時代に川崎に転校する際に、千里丘駅で餞別を買ってくれ、
「これ、マドレーヌや」と言われたこと。
大学で東京と大阪に分かれて、小説の同人誌を発行し、
メールのない時代に原稿のやりとりにも苦労したこと。
社会人になってから、会社を辞めて航空自衛隊に入ったR君が、
「わし、未来の荒鷲やねん」と言ったこと。
渋谷で飲んだ時に、「久しぶりに喧嘩でもするか」という話になり、
悪そうな二人組とケンカをしたところ、あっという間にポケベルで仲間を呼ばれたこと。
気がついたら20人くらいに囲まれてボコボコに殴られ、僕は翌日昼前まで東横線車内に
血だらけで寝ており、R君は駅構内に血だらけで転がっていたこと。
「なんで遠巻きに見とんねん。東京の人間は冷たいのお」というのが、
電話で最後に話した時に彼が繰り返していた言葉だったこと。
・・・・・・
そんなことのすべてが、
映像と、音と、匂いと、感情を伴って、
一気に押し寄せてきた。
R君が、いかに特別な日々を過ごした、特別な男であったかということを、
「唐突に」思い出した。
僕たちが、いかに悪くて愛すべきクソガキだったのかを、
唐突に思い出した。
これまでどうして、ツテをたどってR君に連絡を取ろうとしなかったのだろう。
このまま会わぬままに、二人とも死んでいたかもしれないのに。
企画会社社長に調べてもらって、
R君の連絡先を聞いてもらった。
彼は、思ったよりも近くにいた。
お世話になっている人の同僚だった。
今週末に、久しぶりにR君と会う。